長老の菊丸

 ある日、裏山にあるトータス池にトカゲの月光と出かけた。トータス池にはワニの菊丸が住んでいる。ワニの菊丸はもうどれくらい生きているのか判らないほどの長老で昔の話をよくしてくれる。僕らはワニの菊丸の話を聞くのが大好きだった。今日はどんな話が聞けるのだろうか。

 トータス池には僕らの他にもカラスの黒助やらイモリの腹赤やらタヌキのごろ太など沢山の住人が来ていた。おもむろにトータス池から水泡が立ち上るとワニの菊丸が現れた。菊丸はこちらをぐるりと一回り見つめた。そして今度は遠くを眺めるようにして話し始めた。

  昔この池がまだ海だったころわしゃよくあちこちの島へ行ったものだ。その中でも絵島には美味い食べ物があって美味い酒があっていいヒトが沢山いた。ある日 その絵島に空から銀色に光る丸いものが降りてきた。中からは見たことの無い生き物が出てきてわしに挨拶したのじゃ。ヒトのようだけどもっと細くて小枝のよ うな生き物だった。彼らは最初、何を言ってるのか全然判らなかったけど途中からは話が出来るようになった。

 わしはそこで彼らからへんな 食べ物をもらって食べたんじゃ、これは不死の薬だ、あなたはこの先いつまでも生きていられる、そう言い残してかれらは去っていった。わしはそれからもう何 年も何百年も何千年も生きておる。両親も友達も妻も子供も皆わしより先に死んだ、でもおまえたちのような沢山の友人が出来た、それはよかったがいつかは別 れもくる、長生きはいいことばかりじゃ無いのぉ。

 いつ聞いてもとても哀しい話だった。もし知っている人が皆死んで自分だけ永遠に生きるって辛いことだろう。僕はまだ未来があるが死も待ち受けてるのだなぁと実感した。
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