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また明日ね。


こっちに来て座れば、どうぞ
あ、いや、いいっす、あの・・・

そう、そんな所で立ってると疲れるでしょ?
はい、そうっすね、失礼します・・・

何も立ってる必要は無かったのだが先輩と二人ということにドキドキしてしまいちょっと離れたところに立っていた。

気を使ってくれたのだろうけどいいのか悪いのか判らない。
結局、先輩のかける言葉に誘われて隣に座った。
隣といっても一人分空けて座っていた。

学校からの帰りの電車の中、同じ車両には誰もいない、僕と先輩だけだった。

先輩からは微かに汗の匂いに混じり甘い香りがする。
とても甘い香りだった。
夏服のセーラー服がとても眩しく見える、
白い腕は細くしなやかに見える、ボブのヘアースタイルがサラサラしている。

窓から入る風に揺られ時々髪も揺れた。
思わず手を出しその髪に触れたくなる衝動に駆られる。
でも絶対に触れる事は出来ない、触れられない存在なのだ。

先輩の顔を見る事は出来なかった。
とても見ることは出来ないのでチラチラと盗み見した。
その様子が気になったのか先輩は振り返り僕を見た。

何?どうかした?
いや、え、あ、何でもないっす。

そう、何か言いたそうね?
あ、いえ、何も無いっすよ。

そう。

それだけ言うと先輩は笑った。
僕も笑おうとしたが上手く笑えなかった。

無言のまま電車はどんどん走っていった。
外は薄っすらと暗くなり始めている。
星が瞬きだしている、綺麗な星達が瞬いている。

電車は僕が降りる駅に着いた。
僕は立ち上がり先輩に向かい慌しくそして深くお辞儀をしていた。

あ、え、さようなら、先輩。
はい、また明日ね。

先輩はまた微笑んでいた。
その言葉を聞いたとき僕も思わず笑みがこぼれた。

そう、その笑顔が見たかったのよ。
え、あの、その・・・

気を付けて、さよなら。

先輩は軽く手を振っていた。
僕は閉まるドア越しに先輩を眺めていた。
電車が見えなくなるまで眺めていた。

星がそれを見ていた。
星だけがそれを知っていた。
また明日ね、僕は心の中で何度も何度も呟いていた。
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