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Perfect Kiss


小雨降る中、君と初めてキスをした。
その日、二人で街を漂い他愛の無い会話を続けた。
本心を打ち明けることも無く暮れていく一日。
気が付けばもう君の家の玄関先、何も始まらない日がまた去ろうとしている。

人通りのある歩道で僕らは言葉少なに佇んでいた。

どうしていいのか判らない。

君は意を決して帰ろうとし言葉を投げかけた。
「また明日ね」
「うん」

それだけ言葉を交わし踵を返す刹那、僕は君の手を取り傘の中へ引き寄せた。
君は僕を見つめると何も語らずゆっくりと瞳を閉じた。
それに従うように君の唇にそっと自分の唇を重ねる。
雨の音も雑踏の音も何もかもが消え去り二人の鼓動だけが聞こえている。
それはほんの一瞬であり軽いフレンチキスだったがお互いの心が透けて見えたときだった。

「ありがとう」

ゆっくりとお互いの身体の間に空間を作りながら震える声でやっと答えた君はそのまま走り去った。

僕はいつまでもそこに佇み君の後姿を眺めていた。
何も始まらない日は今終わった、これから全てが始まるのだろう。
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